2026年4月号 ─ 新年度の採用市場と事業会社内製化の最新動向
2026年4月のITエンジニア業界は、新年度入社の新卒エンジニア配属と、事業会社の4月期決算(3月期決算)が交差する特徴的な月だった。事業会社の内製エンジニア新卒採用が過去最高水準に達した一方、SI業界の若手新規参入は前年比減少が顕著に。本号では、新年度の採用市場、4月期決算が示す事業会社内製化の継続加速、新卒エンジニア配属動向、フリーランス保護法施行から半年経過の業界変化を独立系メディアの視点でキュレーション。エンジニアキャリアの中期戦略を考える材料として整理する。
今月の3大トピック
- 事業会社の新卒エンジニア採用が過去最高水準:上位事業会社100社合計で約8,500名、SI業界より多い構造に
- 4月期決算が示す事業会社の内製化加速:主要事業会社のIT投資前年比+22%、内製組織拡大が継続
- フリーランス保護法施行半年、業界の支払いサイトが平均2.3日短縮:本誌の予測通りの効果が確認
編集部の評価:2026年4月は、業界の中長期構造変化が新年度ベースで定着したことを示す月。「新卒エンジニアがSI企業に行かない」という構造変化が、もはや一過性のトレンドではなく確定的な業界変化として認識される段階に入った。
業界データ ─ 新年度の単価動向と新卒採用数
主要エージェント10社の単価動向(前月比)
| エージェント | 平均月単価(4月) | 前月比 | 動向 |
|---|---|---|---|
| Tech Stock | ¥935,000 | +0.5% | シニア案件継続堅調 |
| レバテックフリーランス | ¥842,000 | +0.4% | 新年度案件出揃う |
| HiPro Tech | ¥820,000 | +0.8% | 4月期予算案件多数 |
| Midworks | ¥800,000 | +0.3% | 独立直後層の需要堅調 |
| テクフリ | ¥780,000 | +0.5% | 3ヶ月単価交渉が定着 |
| Findy Freelance | ¥770,000 | +0.7% | SaaS案件好調 |
| ランサーズTA | ¥760,000 | ±0% | 横ばい |
| TechHero | ¥720,000 | +1.1% | 登録者急増効果 |
新卒エンジニアの就職先分布(2026年4月入社)
| 就職先カテゴリ | 新卒入社数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 事業会社・SaaS・スタートアップ | 約8,500名 | +21% |
| 大手SIer | 約6,700名 | -3% |
| 中堅SES企業 | 約9,400名 | -6% |
| 外資系IT | 約2,100名 | +8% |
| コンサル系 | 約3,200名 | +5% |
業界ニュース ─ 主要エージェントの動き
主要エージェント、新年度キャンペーンで新規登録者+30%
新年度のスタートに合わせて、主要エージェント各社が登録キャンペーンを展開。レバテックフリーランス・テクフリ・Findy Freelance等の新規登録者が前月比+30%増。
フリーランス保護法施行半年、業界の支払いサイトが平均2.3日短縮
2024年11月施行のフリーランス保護法(60日以内支払い義務等)の効果が業界全体に浸透。本誌調査では、15社平均の支払いサイトが施行前と比べて平均2.3日短縮。
新年度予算ベースのフリーランス案件、業界全体で前年比+14%
4月の新年度予算ベースでスタートしたフリーランス案件数が、業界全体で前年同月比+14%増加。事業会社・スタートアップを中心にIT予算の増額傾向。
中堅SES企業の業界再編が加速、4月で6社の合併・吸収発表
中堅SES企業の業界再編が継続。4月だけで6社の合併・吸収案件が発表された。事業会社内製化シフトとAI普及による工数モデル瓦解が、中小SES企業の経営を圧迫している。
事業会社・採用ニュース
主要事業会社100社、IT投資が前年比+22%の過去最高水準
主要事業会社100社の2026年3月期決算が出揃い、IT投資額が前年比+22%の過去最高水準に。内製エンジニア組織の人件費が、外注費を上回る企業が初めて過半数を超えた。
金融業界のDX人材採用、新年度で前年比+38%増
金融業界(メガバンク・大手保険・証券)のDX人材採用枠が、新年度で前年比+38%増。3メガバンクは個別に「2027年までにIT人材30%増」の方針を表明。
大手EC・小売企業のエンジニア組織、平均30%拡大計画
楽天・ZOZOTOWN・メルカリ・ベイクルーズ等の大手EC・小売企業10社が、2026年度のエンジニア組織を平均30%拡大する計画を表明。フリーランス活用枠も同時に拡大。
人事・組織変動
2026年4月のCTO・VPoE就任発表数、月間28件
主要転職メディアの集計で、2026年4月のCTO・VPoEクラス就任発表が月間28件。年度初の人事として、新年度組織体制の構築に伴う動き。
4月のスタートアップ大型調達5件、エンジニア採用ニーズ急増
2026年4月にシリーズB以降の大型調達(¥10億円超)を実施したスタートアップが5件。各社ともエンジニア組織拡大計画を発表。業務委託エンジニア枠も同時に拡大。
米国テック大手、AI推進による組織再編で年初から計1.2万名のレイオフ
米国テック大手の2026年初からのレイオフ累計が約1.2万名に達した。AI活用による業務効率化と組織のスリム化が背景。日本人エンジニア(H-1B保有者)への影響も継続。
今月の特集 ─ 新年度で見える、エンジニア業界の中長期構造
2026年4月の新年度入りで、エンジニア業界の中長期構造が改めて可視化された。本号の特集として、「新卒就職先データから読み解く業界の重心移動」を分析する。
5年間の新卒就職先構成の変化
| 年 | 事業会社系 | SI系 | 事業会社系比率 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 約4,200名 | 約16,800名 | 20.0% |
| 2022年 | 約5,100名 | 約16,200名 | 24.0% |
| 2023年 | 約6,300名 | 約15,500名 | 28.9% |
| 2024年 | 約7,200名 | 約14,800名 | 32.7% |
| 2025年 | 約8,000名 | 約16,800名 | 32.3% |
| 2026年 | 約8,500名 | 約16,100名 | 34.6% |
5年間で事業会社系の新卒比率が20.0% → 34.6%へと急上昇している。これは「新卒エンジニアの選好が事業会社にシフトしている」だけでなく、事業会社側の採用枠が継続的に拡大していることを示す。
長期的なエンジニア人口の重心移動
新卒の選好変化は、5-10年後の業界全体のエンジニア人口構成に大きな影響を与える。本誌が試算したシナリオ:
- 2030年予測:事業会社系エンジニア人口がSI系を初めて超える(事業会社45% : SI 40% : その他15%)
- 2035年予測:事業会社系が業界の過半数(事業会社55% : SI 30% : その他15%)
これは本誌Series 02「SI業界の構造的縮小」で予測した「シナリオ①緩やかな縮小と再編」と整合する数字。
フリーランスエンジニアへの含意
これからのフリーランスは、「事業会社直結 × エンド直案件にアクセスできるエージェント」を中心に並行登録するのが正解。本誌のFindy Freelance・HiPro Tech・テクフリ等の比較を参考に、自分のフェーズに合わせて選択してほしい。
来月(2026年5月)のウォッチポイント
- AI元年から1年の節目:本格的なAI活用普及から1年経過。業界全体の振り返りと、シニア層・ジュニア層の単価二極化の継続性を確認
- 主要エージェントのAI関連案件比率:レバテックFL・Findy等の最大手で、AI関連案件の特集ページや新機能リリースが予想される
- 越境フリーランスの動向:Deel等のEoRプラットフォームの日本人登録者数が引き続き急成長見込み
- CTO・VPoE採用市場:4月の28件から、5月はゴールデンウィーク後に新規発表が加速見込み
- シニア層単価の継続上昇:13年+シニアの単価が、月次レベルで+1%以上の上昇を続けるか
来月号では、これらのウォッチポイントの進捗と、AI元年から1年の業界総括を独立系メディアの視点で深堀りする。